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又信会東京支部について > 又信東京第50号 > 自然災害と人災(笠井和彦)
 




又信会東京支部長
笠井 和彦
(経済7回)
又信会東京支部の皆様におかれましては、お元気にお過ごしのことと推察申しあげます。

このように書きながら、同時に、3月11日に発生しました東日本大震災で被害にあわれた又信会会員の方々もおられるのではないか、と考えますと胸が痛みます。

東北地方に住んでおられた方は勿論のこと、千葉県でも浦安地区では液状化現象がみられたとの情報もあり、,住宅が大きな被害にあわれた方もおられるのではないかと思っています。

いずれにしましても、被害にあわれた方々に対し、心からお悔やみと励ましの気持ちを表したいと思います。


今回の東日本大震災はわれわれに多くの問題と課題を突きつけることになりました。

大地震と津波、それも千年に一度といった規模の災害は、歴史の教訓といっても人間の知恵をはるかに超える自然の暴力とも言え、これを克服するのに一体何が必要なのか、まさに今こそ人知をしぼって苦難に立ち向かうとき、と考えます。

そのためには安易な妥協は許さない覚悟が必要ですし、公的資金を徹底的に投入していくべきだと思います。財源をどうするのか、今、いろいろ議論されていますが、これもすでに各方面から指摘されているように、増税の前にやるべきこと、すなわち企業でいえばまさに徹底したコストカットを大胆に行い、併行して増税を行うというまさにオーソドックスな道筋を歩むべきと考えます。それが政治家に課せられた使命であります。


ところで、今回の大震災を複雑にしているのは、福島の原発事故の存在です。これは、自然の災害とは程遠い人災であり、それゆえに人間がおこした事故というべきものであります。

これまでわれわれは、原子力による発電は低コストであり、クリーンな電力で、わが国の経済発展に不可欠なエネルギー資源であると説明され、それをほとんどの国民が信じてきたことはあらためて説明する必要もありません。

今回明らかになったことは、原子力というものが、人間の力ではコントロールできない種類のエネルギーであり、今回のような事故が発生してもこれを制御できず、結果として放射能が人間にどれだけの影響をあたえるのかということについても、未知のことが多すぎるということです。

まさに杜撰というべきか、でたらめというべきか、よくもこれまで原子力発電所が、人間と共存してきたものだと思います。

事態があきらかになるにつれて、原発というものについて、真実というものがいかにこれまで隠蔽されねじ曲げられ、正論なるものが無視され、正しいことを言うものは迫害とまでは言わなくても隅っこに追いやられてきた姿が浮き彫りになってきました。


戦前であればいざ知らず、現在もそれに近い状況が続いていたことに愕然とします。

なぜこういうことになったのか、すでにいろいろな方が論評を繰り広げていますが、極論すれば、政治と企業が癒着した結果であるといっても過言ではないと思います。

安全、安定、安価という3原則を一挙に達成するには原子力しかない、と思われてきた原発神話が一挙に崩れ去った今、これまでこの体制を支えてきた構造を根本から見直すべき時であろうと思われます。1995年から始まった電力の自由化は2000年に入って頓挫。電力会社は競争にさらされることなく、地域独占の体制を維持し続けています。競争なきところには進歩はなく、この体制をチェックすべき政治と手を結んできたことが最大の問題であろうと思います。テレビで、ある農民の方の「そんなに安全なのであれば、東電は、地域外の過疎地に原発を建設するのではなく、なぜ東京のど真ん中に建設しないのか」という怒気を含んだ発言が忘れられません。


8月の終わりに菅内閣は自然エネルギー法案を可決しました。

風力、太陽、地熱などのエネルギーを使って電力を作る道筋をはっきりしようとするもので、その意味では一歩前進したといえます。これまで、自然エネルギーは、安全、安定、安価のうち、安全ではあるが安定性に欠け、またコストも高いということで退けられてきていましたが、今回の原発問題を機に急に見直しが行われ来ています。

これは、自然エネルギーで生産した電力を、ある一定期間、ある価格で、全量、電力会社に買い取りを義務付けようとするもので、詳細は来年4月ごろ決定され、施行は7月からとされています。この結果すこしずつ自然エネルギーでの電力生産事業が動きつつありますが、本格的にはわが国としてのエネルギー政策をどうするのか、本格的な議論を踏まえた方向付けを明確にしていく必要があります。


今回われわれは多くの犠牲者を始め、大きな被害を受けました。また原発事故は解決までに何年を要するのかいまだにわからない状況にあります。怒りも覚えます。

しかしながら、ここは冷静に、自然と共存する仕組みを今度こそ実現し、また人災に対しては、

社会の構造そのものの抜本的改革を含め、腹をすえた取り組みを実行していくべき時と考えます。

 
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