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又信会員A la Carte

「よりよい暮らしに 知の刺激」
〜市民と大学が協働で「いろはカルタ養生訓」作成

鴫浜祥之さん


<「カレッジリンク・プログラム」について>
千葉大学柏の葉キャンパスで、三年前から地域住民が参加した「カレッジリンク・プログラム」が始まった。環境問題や少子高齢化、食の安全・安心、健康の維持など様々な問題を大学側と一緒に考え、議論し、自らのライフスタイルを見直してみよう、という試みである。「より良い人生」は毎日の暮らしから〜。その主人公である市民が主体となって地域や日々の問題を考えていくという「市民科学」の実践がこのプログラムの狙いである。「健康」、「環境」、「食」に関して持続可能な暮らし(サスティナブルデザイン)を考えるために、まずは「基礎コース」を受け、専門教授や招聘講師の話を聞き、参加者間でグループワークを行い、発表し合う。年代・性別・経験の異なる市民が様々な観点からコミュニケーションを取り合い、情報交換を行い(互教互学)、新たな「気づき」を発見する、知的刺激の多い場となる。

 「基礎コース」修了すると、一つのテーマを更に掘り下げて学ぶ「専門コース」に参加が可能となる。講義と実習を兼ねながら展開される「専門コース」の講師陣は、当該テーマの研究者、実践者、企業などが担当する。「専門コース」が目指すのは、単に知識の積み重ね、講義の聞きっ放しで終わらないように、何がしかのアウトプットとして暮らしの向上や地域の向上のための提案を行っていく。

<「いろはカルタ養生訓」誕生まで>
 2009年後期専門コースは「健康と食に関するライフスタイルを考える」というテーマを取り上げた。2010年2月、東洋医学(鍼灸や漢方、薬膳など)、西洋医学(予防医学など)など全6回の講義の最終回の発表の場で、あるグループが「折角学び、ディスカッションした内容をこのまま終わらせるのではなく、養生訓カルタを作り、広く市民が健やかに暮らせるよう情報発信したらどうか」という提案を行った。

2010年4月、賛同した受講生が10数人集まり、どのようにまとめて行ったら良いか相談した。「ラーメン一杯、汁用心」、「せかすな ストレスたまるだけ」、「鵜呑みにしないで 健康情報」など参加者が考えた「読み句」候補作品が集まり出した。5月から6月にかけて講義で学び、実践した内容を「読み句」に置き換えていく作業は最初順調に進むかに思われた。しかし、内容は理解していても、頭にくる言葉に上手くつながるか、「読み句」に偏りはないか、語呂は適切かなどを吟味しているうちに、だんだんと困難な問題に突き当たってきた。暑い夏になってくると、当初は10数人いたメンバーもいつの間にか一人、二人と顔を見せなくなってきた。

このプロジェクトを立ち上げて3カ月経った7月には5人だけになった。最終的にはこの5人と千葉大学のN先生の合計6人が完成から販売まで1年半の活動のコアメンバーとして苦労と喜びを共有することになった。残暑厳しい頃、「読み句」が出揃ってきた最終場面で苦労したのは「ら行」。ら・り・る・れ・ろ を頭にして、誰もが理解できる「読み句」を作成することにかなりの日数を要した。9月になる頃まだ14句を残して悪戦苦闘。ボツにするのが惜しい作品もあったが、頭が重なったり、テーマが重複したり、一度は作成した「読み句」を読み直してみて、字句や語呂を修正するなど試行錯誤が続いた。こうして44句が出揃ったのが9月中旬。
会合は最盛期には週一回、夜7時から千葉大学キャンパス内の教室に集まって開催した。発行に当たって、どの程度のコストがかかるのか、まるで見当が付かない。各方面から情報を集めた結果、当初は「カルタ」形式の構想であったが、議論の中で、「冊子」方式を採用しよう、ということになった。

次のポイントは「絵札」にあたる「イラスト」の問題。先生からツイッターとホームページで呼びかけてみようとの提案。早速実施したら、学生やイラストレーターから早速反応があり、「イラストコンテストを実施して、タイプの異なる7人のイラストレーターが出揃った。この7人に「読み句」を分担して「ラフ」な下絵を送ってもらい、イメージがつかめたところで作品を仕上げてもらった。個性豊かバラエティに富んだ作品が次々に集まってきた。「読み句」と「イラスト」のドッキングは割合順調に進んだ。
さて、次は「読み句」の「解説」。これは主に千葉大の先生方にお願いすることにした。限られた字数の中で、専門的な解説をするのは、如何にご専門分野と言えども意外と難しい。でもそこはやはり先生方だった。こうして「読み句」「イラスト」「解説」の三点セットが出揃った。
 秋深まる頃、お金の工面。全くゼロからのスタート。まずはこの活動を理解してくれているカレッジリンクの修了生に呼びかけて協力を依頼。次にツイッターとホームページでも協力を募った。

地元企業にも大いに理解と協力をいただいた。その結果、法・個人合わせてかなりまとまった寄付金が集まった。年が改まった頃、冊子の仕様、所要経費、レイアウトなど、いよいよ本格的な冊子に向けての検討が始まった。各ページのデザインも募集して、全てのページを担当いただくことにした。

どのような冊子になるのか、今振り返ると、この頃が一番ワクワクした時であったような気がする。印刷会社も入札制度を採用し、十分吟味した結果、地元のO社に依頼することになった。いよいよ入稿、校正、そして印刷から入荷、という時に、あの大震災が発生。一時は用紙が無くなって、予定していた3月入荷は見送り。桜吹雪が舞う4月23日、初版が発行された。

<空前のベストセラーに!>
 入荷された冊子は、最初、寄付いただいた方、デザイナー、イラストレーター、解説の先生方に配布しつつ、印刷代などをカバーするため、メンバーが手分けしてセールスした。小生の先輩に送ったら、「これは良い。仲間に声掛けしよう。」と言っていただき、あっという間に100冊くらいの注文を受けた時は有難かった。地元紙や公共施設での広報を通じてPRを継続していたが、潮目が変わったのは6月17日。読売新聞朝刊全国版で紹介されてからだった。その日、大学事務室の電話が鳴りっぱなし・・・!!全国各地から注文が殺到し、数日は事務にも支障を来す程の多くのお申し込みが継続した。ネットでも注文があり、長崎県の壱岐市からは200冊のまとまった注文。市民の方に「健康」の大切さや「養生訓」を広めたい、との有難いお話をいただいた。

多くの注文に備えて、当初2000冊の発行部数はあっという間に底を尽き、7月には3000冊を増刷した。3冊、5冊、10冊・・とまとめてお申し込みもいただいた。発送はメンバーが総出で当たり、「メール便」を使ってお送りした。新聞記事の結果は700件、2100冊強に及び、メンバーが販売したものと合わせて4000冊を超えるベストセラーとなった。

この冊子を読んだ方々からの感想文も数多く寄せられている。
「大学と市民が協働でカルタ冊子を作るなんて、なんと素晴らしいことでしょう」
「100歳を超えたが、この養生訓を読んでいると新たな力が湧いてきます」
「施設のみんなで回し読みしています」
「今度老人会の集まりのとき、輪読します」「友人に勧めます」等々。
編集子としてこんなに嬉しい便りがあるだろうか。昨夜はメンバーが集まって、一年半に及ぶ養生訓カルタプロジェクトの慰労会を開催した。
最初、メンバーがふと漏らした「カルタが作れないかなー」という一言が、このように全国的な広がりある活動になるとは、誰も想像できなかった。しかし、こういう活動こそ真の「市民科学」の実践であり、成果ではないだろうか。

注:冊子は@300円(税込)で今でも販売しています。(送料実費ご負担下さい)
もしご希望の方がいらっしゃいましたら下記メールないし電話までお申込み下さい。
y.shigihama@jcom.home.ne.jp 04-7133-8318 鴫浜(しぎはま)まで。

 
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