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又信会員A la Carte

新たな仕事のなかで思うこと
井原理代さん


人生には思いがけないことが起こる、と思いながら、39年間の香川大学経済学部および大学院地域マネジメント研究科における教員生活を退職後、東京での仕事と生活をしていることを、2年前の『東京又信』に書かせいただきました。そう思い続けながら、日本放送協会(NHK)の経営委員会委員兼監査委員を務めて、2年半あまり経ちました。その新たな仕事のなかで思うことを少し綴ってみたいと思います。

この間、最も心に残ったのは、やはり3月11日に発生した東日本大震災への対応でした。国民の生命と財産を守ることが、公共放送NHKの役割として如何に重要であるかを痛切に再認識したところです。

震災関連の放送時間は、地震発生から3月末までの総合テレビでのニュース・番組の総放送時間が約428時間で、阪神・淡路大震災の時には1か月で約273時間だったのを大きく上回り、また教育テレビでの安否情報が約57時間でした。

インターネットを活用した情報提供にもいろいろな取り組みがありました。特別措置として、総合テレビのライブストリーミングを3 月2 5 日まで実施、「ユーストリーム」「ニコニコ生放送」「ヤフー」の3つに配信・提供しました。

また仙台・盛岡・福島・青森・水戸等の各放送局では、地震発生以降、ライフライン、避難所、原子力発電所などのきめ細かい地域情報が、総合テレビ・ラジオ第1やパソコン、携帯電話、データ放送等で提供されました。

こうした対応や取り組みは、会長、副会長および全理事が出席する大震災対策本部(役員連絡会)が地震発生直後から毎日2回定時に開かれたなかで実行されたのですが、私も常勤監査委員として常に会議に出席したところです。なお、この会議は現在も月1回ですが、継続して開催されています。

このようなNHKの情報提供に対し、野村総合研究所の「震災に伴うメディア接触動向に関する調査」によれば、東日本大震災に関する情報に接して、様々なメディアや情報発信主体に対する信頼度の変化を尋ねたところ、「信頼度が上がった」との回答が最も多かったのがNHKで、高い評価を受けています。しかし、今回の経験を経て取り組むべき課題も多く認識されたとして、様々な分野で改善すべき点や課題に対する検討が進んでいます。

各地方局でも、3-Screens 展開としてデータ放送での地域密着の防災情報提供の取り組みが進んでいます。高松放送局についていえば、香川県と連携し、香川県の情報公開サーバーから河川水位情報(県内34河川に設置されている58観測所のデータ)、雨量(県内に設置されている53観測所のデータ)、避難情報(市町が発表する避難準備情報、避難勧告・指示などの情報)をNHKデータ放送システムで日常的に取得し、迅速かつ詳細に総合データ放送「くらし防災」の画面で地域の方々に提供しています。例えば、春日川の春日川橋、元山、川北橋地点や、相引川の相引、赤牛橋地点等の約10分間隔で更新される水位情報が提供されており、地域住民に役立つことを期待したいものです。

このような東日本大震災における放送で大きく役立った、放送通信連携サービスは、災害報道のみならず、今後ますます進展することは確実であり、NHKでは、現在、放送技術研究所を中心に鋭意、研究が行われています。同研究所では、放送通信連携サービスのための基盤システムを“Hybridcast”とし、放送の利点(高品質、同報性、低コスト)は継承しつつ、通信の活用で強化し、サービスコンセプトとして、「通信コンテンツとの合成で放送番組をより面白く、分かりやすく見る」「テレビを携帯端末やPCと連携させ番組をより便利に、深く楽しむ」「通信ならではのソーシャル/パーソナルなサービスを放送と連携して使う」をめざしているところです。

このようにみると、公共放送NHKはその役割の重要さにどう応えていくべきか、同時に放送通信連携という大変革の時代の中で今後どう進んでいくべきか、あわせて公共放送NHKを支える受信料制度に関しても真剣な議論がなされなければならない状況にあります。

受信料は「NHKによる放送の提供の対価(料金)ではなく、NHKの維持運営のための特殊負担金であり、当該受信料の支払義務を発生させるための法技術として受信設備の設置者とNHKとの間の受信契約の締結という手法を採用した上、当該設member A la Carte置者にその締結義務を課したもの」と捉えられています。それゆえ、受信料制度は、NHKの番組編集の独立性を担保する貴重な制度といえますが、公平負担が強く要請されるにもかかわらず、必ずしもその状況になく、制度のあり方も含め検討が必要です。また、受信料額は、総括原価方式の考え方に則っていますが、この方式は、一般に当該事業体の効率性向上へのインセンティブを強めることが指摘されており、効率性向上の仕組みを何処に採り入れるか、大きな課題と考えます。

このような大変革期にあるNHKのなかで、私に一体何が出来るのか、自らに問いかけながらの日々ですが、こうした課題に直截に向きあい、出来うる限りの微力を尽くしたいと思っています。

 
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